データ分析関連のまとめ

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2020年度 仁科記念講演会

目次

講演

深層学習と物理学

講演目次

  • 物理学から見る深層学習
  • 深層学習による物理学
    • 物性物理学と深層学習
    • 量子重力理論
    • AdS/CFT対応と深層学習

逆問題と物理学の革新

  • 関数y = f(x)についての問題とは?3種類ある
    • 順問題:yが未知
    • 逆問題1:xが未知→初期値問題(逆変換する方法がわかれば解ける)
    • 逆問題2:fが未知→システム決定問題(厄介)
  • 深層学習はシステム決定問題を問いている。(深層学習はfを求める)
  • 逆問題は物理学の革新を導く
  • 上から下に流れる
    • 実験
    • データ
    • フィッティング←人間の直観によりモデルを考える(関数系を設定)
    • 具体的関数
    • 予言→実験へと進む
  • 機械学習の位置づけは?
    • 科学の流れを機械学習は全部やってくれるか(特に教師あり学習の例で)?
      • 深層学習は膨大なパラメータがあり、モデルの領域には達していないと考えられる

深層学習による物理学

物理学にも機械学習は多く使われている(e.g.天体の画像認識、素粒子実験等)

  • 理論的な部分でどこに活用されているか?

物性物理学と深層学習

量子重力理論

  • ミクロの時空はネットワークである(時空はネットワークと解釈)
    • CFT(量子力学:d次元時空上の場の量子論)重力が入っていない理論とAdS(重力側:(d+1)次元時空上の量子重力)重力を持っている理論が量子的に等価→ホログラフィ原理で言いたい事
    • ラグランジアンが違っても、分配関数と相関関数が一致すれば物理が一致する

AdS/CFT対応と深層学習

量子アニーリングによる量子コンピューティング

導入

  • 量子アニーリングの当初の目的:組み合わせ最適化問題

    • 離散多変数の1価関数を最小化(最大化)する問題
    • イジング模型の基底状態を探す問題に帰着
  • 組み合わせ最適化問題のイジング表現(流れ)

    • 離散多変数関数の最小化(最大化)
    • イジング模型の基底状態を求める問題
    • 近接相互作用イジング模型の基底状態(ハードの構造に合わせた埋め込み)
  • 2値ペイントショップ問題

    • ベルトコンベア上を多種類の車が2台ずつ流れてくるが、各車種を2色に塗り分ける
    • 色の交代はコストがかかるので交代回数を最小化する
    • 車の数が増えたり色の種類が増えるとNP困難な問題となる(実用上重要な問題)
    • これをイジング模型で表現する
    • VolkswagenがD-Waveの量子アニーリング装置で実証実験→288回の色変化が57回になった。(ただし古典コンピュータで出来ない計算かどうかは不明)
  • 量子アニーリングの提案

    • Quantom annealing in the transverse Ising modelスピングラス基底状態探索の手段として、純粋に学問的な興味だけから考え出した
    • 量子アニーリングが古典的な手法(シミュレーテッドアニーリング)より高い確率で正解に到達する
    • 論文の引用数:発表してから約15年間ほぼ無視されていた

最近の研究の方向性

  • 量子シミュレーション:物理実験装置として使う
    • 平衡状態の性質
    • 非平衡状態の性質
      • Kibble-Zubek機構
      • 拡張Kibble-Zubek機構
  • 非断熱量子アニーリング(高速性、汎用性、古典シミュレーション不可能性):積極的に励起状態を使う
  • 非疑似古典効果(高速性、汎用性):古典シミュレーション不可能な効果による量子加速
  • 高度な量子効果(横磁場)制御:非一様磁場、逆アニーリング、一時停止による熱平衡化

現状と近未来

  • 量子アニーリング
    • 高速性:D-Waveで古典コンピュータでは実行困難なタスクを実行した例は(Kibble-Zubek機構)以外で多分まだなく、基礎研究が必要
    • 社会課題の解決:社会課題を組み合わせ最適化問題として捉えて、イジング模型で表現することで伝統的な手法より迅速に解ける可能性に多くの人が気付き始めている。
    • システムサイズ:実社会の課題をそのまま載せられるサイズのシステムには現状なってない。量子・古典のハイブリッドが現実的
    • 基礎研究:量子アニーリング最適化問題解決の主要手段として定着するまでには基礎理論~実機開発までの幅広い分野での進歩が必要
  • ゲート方式
    • 量子シミュレーション:NISQデバイスが古典コンピュータではあつかえないシミュレーションを実行できるかはまだ分かってない

社会的な側面・まとめ

  • 最大の課題は人材と基礎科学の研究
  • 日本の最大の弱点は研究者層の薄さ。肌感だが米国と1桁違いそう
  • 国内でこの分野を専門とする研究室は限られている
  • 大学での組織的な人材育成への財政資源投入が、研究自体への予算配分より中長期的には有効かつ重要
  • 基礎研究、デバイス作成、実証実験等あらゆるレベルの研究開発が同時進行
  • 基礎研究がおわってから商品開発を進める通常の研究開発と全く異なる